終わらない杉並木(北関東の諸街道7)

東照宮までを歩き終わりました。かつての例幣使たちは参拝のあとで、江戸に向かっています。どこか日光には終着点というイメージは薄くて、ここで終えるには半端な感じがします。まずはここから宇都宮まで向かうことにします。再び降りたJR日光駅は訪日観…

徳川の道(北関東の諸街道6)

例幣使街道の歩きも、今市まで到着すればあと少しというところ。今回はJR日光線を使っての移動です。車中には日光線各駅の高度が記された路線図が掲げられています。始発の宇都宮では標高は100m台ですが、日光駅だと高度は500mを超えるのですから…

どこまでも杉!杉!杉!(北関東の諸街道5)

前回の歩きから3週間、再び楡木駅へ向かう東武線の車窓には濃淡さまざま赤や黄色、緑色が入り混じった里山の景色が見え、心の底からきれいだと思いました。車中の高校生たちはもっぱらスマホいじりに夢中で、景色など興味なしといった姿ですが、自分の高校…

左手は日光の山(北関東の諸街道4)

例幣使街道の道中は、必ずといってよいほど左手の山々を眺めながらの道中でした。けれども、富田宿を過ぎたころ、左手の山はだんだんと低くなり遠ざかっていきます。この左手の山々が途切れるところが、両毛とよばれる地域の境を示しているように思いました…

左手はなだらかな山(北関東の諸街道3)

前回の歩きでは八木宿についたのは真っ暗な夕方のころで、あたりの風景もよくわかりませんでした。福居駅に再び降りた後で、かつての宿場跡はどうなっているのやらと探しました。八木宿の本陣跡というのは、現在は八木節会館となっている敷地の手前に発見し…

江戸を目指さない道(北関東の諸街道2)

例幣使街道は、年に一回、京都からの使者が日光東照宮に向かうために通る道です。両毛地域とよばれるこの辺りは、かつては東山道が通っていた地域であれば、もしかすると、往時の使者もかつての王朝の栄華を懐かしみながらかつての東山道の道をたどったのだ…

海外の風景を眺める眼差し(東山魁夷の絵画について)

http://www.momat.go.jp/am/exhibition/permanent20170912/ なにもすることのない週末。ひまつぶしとばかりに入った国立近代美術館で展示されていた、東山魁夷の作品を眺めました。名前だけは知っていても、この人の作品を取り立ててながめたことはありませ…

かすかに西国を感じる道(北関東の諸街道1)

甲州街道を歩き通し、泊りがけのいささか遠出の旅が続いていて、少し気軽に訪れるような場所を歩きたくなりました。探してみると、北関東の周辺部にはまだ歩いていない旧街道がぽつぽつと残っています。今度はそれらの旧街道を歩くことにしました。北関東だ…

コロニー(植民地)とは?(北海道 松前と勝山館を訪れて)

北海道の南部、松前から上ノ国、江差にかけての渡島半島のあたりは、地名からもわかるとおり、早くから和人が定住しだした場所と言われています。網野善彦さんの数々の著作では、上ノ国町にある「勝山舘跡」の巨大さについて言及されていて、いつか行きたい…

湖畔の小世界(甲州街道を歩く12)

「諏訪」と称する地域はどこからなのか?富士見町を歩いているあたりでは、高原の雰囲気が濃厚で、地域のシンボルは「八ヶ岳」でしたが、茅野市内に来たとたん、公共のポスターや役所の貼り紙には「諏訪」という文字が多くなります。この地域が「諏訪」と称…

標高900mの道(甲州街道を歩く11)

甲州街道を歩くのも山梨県を過ぎて長野県に到達しました。甲州街道の歩きは、進めば進むほどに標高がだらだらと上がっていくのが特徴です。出発地の日本橋はほぼ海の近くで標高0mなら、ゴールの下諏訪の標高が700m台です。中山道の和田峠のような極端…

故郷での同窓会から…

お盆で里帰りをして、故郷では中学校の同窓会がありました。中学生の時に暮らした町ではただひとつの中学校。いまから思い出すと、懐かしさのあまりにはしゃぎ過ぎたかなと、少し恥ずかしくなります。中学校のころにおとなしかった自分は、話した友達もそん…

台地に住む人たち盆地に住む人たち(甲州街道を歩く11)

前日の晩はつよい雨が降ったようで路面は濡れていました。わたしはといえばそれに気が付かないほどぐっすり寝ていたようです。泊まったさきの甲府のビジネスホテルには、小学生の団体が大勢でとまっています。そういえば夏休みが始まったことにいまさら気が…

崖の上と崖の下(甲州街道を歩く10)

甲州街道の歩く道中ですが、前回は甲府まで歩きました。甲府の街は、まんなかに甲府城が鎮座していて、政治経済からなにからなにまで山梨の中心です。駅前に鎮座する武田信玄の銅像からは、どこか町全体がいかめしい印象を受けます。武田氏を滅ぼしたあとの…

エキセントリックの表出(山田詠美さんの恋愛小説)

柄にもなく、ときどきは恋愛小説をむしょうに読みたくなるときがあって、その時に読むのは、山田詠美さんの諸作だったりします。短編も長編作品もたくさん書かれた山田さんの恋愛小説に、さて共通するモチーフってなにかあったっけ?などと考えてみると、恋…

そういえば選挙だった

都内だと、すでに都議会の選挙が始まっています。自営の旧い工場や商店とかが立ち並んでいる職場の近くにはポスターが掲げられています。いつもであれば、掲げられているポスターのだいたいは、自民党一択なのですが、今回は少し様子が違っていて、貼られて…

ラジオ体操をしながらの妄想

やっかいな梅雨がやってくるまでの季節は、新緑がきらきらとしたここちよい季節で、すこし早起きをしてご近所の公園に行けば、だいたい6時半ころにラジオ体操をしています。多くの体操をする人たちは、もう仕事はリタイヤしたんだろうななと思う年配の人たち…

ぶどう棚の道(甲州街道を歩く9)

甲州街道の歩きは、前回は勝沼まででした。それから1か月が空いてまごまごしているうちに、春は過ぎて初夏になっています。1か月ぶりにおりた勝沼ぶどう郷駅におりると、あたりの風景は、4月よりも濃い緑色に変わりました。甲州街道の勝沼宿から勝沼ぶどう…

関東平野の河川交通と蒸気船

中世の関東平野を推定した地図を眺めると、おおきな河川がいくつも関東平野を縦断していることに気がつきます。茨城県東部の湖沼は、太平洋と繋がっていて、まるで太平洋の内海であるかのようです。その往時の光景は現在の姿からはかけ離れていて、そこでは…

社会が見えなくなる(橋本治「たとえ世界が終っても〜」)

ー 橋本治さんの新刊「たとえ世界が終っても〜」を読み終えたところです。難病を抱えてるという橋本さんの体調もあるのでしょうか、最近の近刊には老いを感じてしまうところもあるのですが、それでもところどころに、鋭い指摘があります。 書の後半を占める…

少し怖くなる道(甲州街道を歩く8)

1月に雪が積もる甲州街道をあるいた後、さすがに笹子峠越えは冬の間は無理だと思って、雪の解けるのを待っていました。4月になれば、たぶん雪も解けているでしょうか、甲州街道の歩きを再開です。この数日の天気予報では、ずっと雨の予報のまま。雨の中を…

(気恥ずかしいけれど)愛の二重奏(カーラブレイとスティーブスワロー)

「愛の二重奏」などといえば、なんとも気恥ずかしい言葉なのですが、たまたま、YOUTUBEで眺めた、カーラブレイとスティーブスワローのデュエットの動画をみて、その気恥ずかしい言葉がとてもぴったりの演奏のように感じたのです。Carla Bley & Steve Swallow…

かんばん方式も回せない

今週のニュースでは、ヤマト運輸が増大するネット通販の需要に運び手が追いつかず、運賃の値上げやサービスの縮小を行う。というニュースが流れていました。これを日本式のかんばん方式の終わりの始まりととらえている方もいて、なるほどなと思ったのでした…

壁を壊す。壁を作る(NHKBS「ヨーロッパ鉄道の旅」)

関口知宏さんが、世界中の鉄道に乗りながら紹介する番組「BSヨーロッパ鉄道の旅」が好きでよく眺めます。http://www.nhk.or.jp/bs/sekiguchi-tabi/ のですが、前回の放送は、イギリス各地をめぐっていました。いわゆる旅番組の範疇に入るこの番組が、ことさ…

平治物語を読む(軍記物のおもしろさ2)

軍記物の続き、前回に保元物語に続いて読んだのは平治物語。平治の乱を取り上げてたはずが、源頼朝の賛美にトーンが変わってしまう摩訶不思議な展開となっています。 その頼朝賛美をのぞけば、この物語の主題は源義朝の悲哀です。保元の乱では勝利したものの…

保元物語を読む(軍記物のおもしろさ1)

あまり読まれることもなく、かたすみに鎮座しているのが、図書館の中での、古典文学の扱いではないでしょうか。そんななかにある「新日本古典文学大系」という全集ものを読んでは、古文の魅力にはまってしまう。たかだか100年そこらしかない言文一致体に…

治天の君の欲望が争いのもと(橋本治「双調平家物語ノート〜権力の日本人」を読む3)

平安時代に権力のまんなかに居たのは、やっぱり王朝や摂関家です。さらにそのまんなかに居たのは治天の君、すなわち後白河法皇 であって、たかだか平氏の権力や源平の争いというのは、添え物なんです。それまで、摂関家がとり仕切る官僚機構にコントロールさ…

だんだん寒くなる道(甲州街道を歩く7)

昨年の秋から始めた甲州街道歩きですが、小仏の峠をこえて山梨県に入り、野田尻宿に到達していました。ひな壇のような谷間の集落をぬう相模湖からの道中は、上野原からは段丘上に広がる集落ののぼりながら通る道に変わりました。それは、マチュピチュにでも…

戦を知らない者たちの戦〜保元の乱(橋本治「双調平家物語ノート〜権力の日本人」を読む2)

平安時代の初期に薬子の変が起きてから、保元の乱がおきるまで、都の王朝のなかに死刑はありませんでした。王朝に直属する常備軍というものも存在しなかった。武士の中には朝廷に仕え官職を持つ者はいるけれど、あくまで警察官という肩書きです。都を離れた…

摂関家の走狗(橋本治「双調平家物語ノート〜権力の日本人」を読む(その1))

前回の記事でとりあげた、大澤真幸さんの「日本史のなぞ」で、橋本治さん「双調平家物語ノート」に言及がありました。読んでみたいところですがなかなか入手しづらい本のようです。そんなとき役立つのはやっぱり図書館で、探しては借りて読んだところです。…