NHKBS「にっぽん縦断こころ旅」を見ながら思うこと

 BSNHKで放映されている、火野正平さんが自転車で日本の各地をまわるという番組を、ときどき眺めることがあります。全体にほっこり臭がただよう番組の構成は、あまり好きではないのですが、それでも画面に映る、日本各地の山河の景色は、本当にバラエティに富んでいるなあと改めて思い知らされる好きな番組です。趣味で、休日に旧い街道の道を歩いてみることが多いのですが、そこで感じることは、山河の風景だけでなく、ただの集落ひとつとっても、現実世界の風景のバラエティ豊かなことです。

 村上龍さんの小説「希望の国のエグソダス」は、不登校の中学生たちが、日本政府からの実質的な独立を果たすというスジの小説でしたが、小説の始めで、リーダー格の中学生の父親が語った言葉が、いまでも心に残っているのです。たしか、「日本で生きていくことは、この山河たちと共にずっとつき合っていくということだ」(うろおぼえなので正確ではありません)という内容だったと思います。今になって染みる言葉です。

 それに比べれば、SNSなどが醸し出すネット上の仮想空間は、まだ、現実の山河に比べれば、なんとものっぺりとした平板な空間に写ります。