橋本治「江戸のフランス革命を!」を読む1

橋本治さんの「江戸にフランス革命を!」という本を読んでいます。そうとう古い本で書かれたのは、1980年代も後半、バブル経済まっさかりという頃でしょうか。なにより私は、この本のタイトルが好きで、それだけで買ったようなものです。アマゾンで買うとたった1円ですし・・・。

 で本の中身はといえば、橋本さんは、江戸を語るのは難しい!といろいろなところで言及しています。それがこの本に通底する調子でして、なるほど明治維新は、それが世界的にも例がない大変革を日本がなしとげた。だから「日本偉い」という語られかたをする事が多く、反面で、太平洋戦争まで突き進む、軍国主義の原型を明治維新にみる語られかたは、明治政府下の暗黒社会ぶりを強調するがために、江戸時代をバラ色に書きすぎるきらいがある。「明治維新を準備した江戸時代」という視点が、現在にいたってもほとんどないのですね、そのことを橋本さんは強調しています。

 確かに、現在でも江戸時代の社会通念やしきたりを今でもひきづっているのは明らかです。田舎の古い家であれば、江戸時代から引き継がれて残っているものが倉庫にころがっているはずです。でも、当時のモノは残っていても、われわれの意識は実は、明治維新でいったん切断されてしまっている。その切断面を乗り越えて、江戸時代の一般の人たちがどのように物事を考えて生活していたかなんてさかのぼるのは、木の皮を一枚一枚剥いでいくようなややこしいことなんだろうと思います。