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橋本治「江戸にフランス革命を!」を読む4

 「世間にご迷惑をおかけしました」と言いながら、頭を下げる有名人のたぐいは、日本ではいつもの日常光景ですね。べつに当事者ではないのになんで謝られるのか?よく考えればへんな話ですよね。と思うのだけれど、日常になるとそれが不思議なことでもなんでもないと思ってきます。橋本治さん「江戸にフランス革命を!」は、江戸時代の社会に関する考察を述べたものですが、この得体のしれない世間についても述べています。そのかぎを握るのは直訴という行為だった。ということです。

 江戸時代に、農民が不平不満を訴えるのがだめだったわけではありません、訴える先は直接の管理者である代官です。ただし埒があかない場合には、代官の上に直接、不平不満を訴える、直訴という非常手段に訴えることができる。それは、実は禁止されているわけではありません。百姓一揆なども構造は似ています。ただし、その代償として、訴えた者が死刑になるということです。訴えることが悪いのではなく、訴えかたのルールを破ったこと、いわゆる秩序を破った事に対する罰なのです。これが重要だといいます。

 明治時代になり、四民平等の世になり、まがりなりにも議会ができれば、不平不満を述べたからといって、直ちに死刑になると言うことはなくなりますが、実はそのことによって、旧支配者が設定した秩序、直訴=死というプログラムは個人のなかに内面化されて無意識化されていきます。その結果なのだと思います。だから世間を騒がせること=秩序を乱す=死罪、と多くの人のなかでつながっている。

 だから、その後の歴史では、農民や町人による革命は起きませんでした。明治維新は市民革命ではなくサムライ階級の間でのクーデターにしか過ぎません。逆に言えば死をおそれなかった侍たちだったからからこそ、明治維新というクーデターを達成することができたとも言うことができるでしょう。