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「摂州合邦辻」(歌舞伎の台本を読む)

「摂州合邦辻」という歌舞伎の台本を読みました。その話は、美しい武士の妻が、美少年である義理の息子に対して不義を働き、毒を盛って彼の顔を見にくく変形させてしまう。「ああ汚らわしい」とばかりに、父親にまで罵倒されつづける彼女の行動には、実は理由があって、息子の命をつけねらうものが居て、その企みから逃れるにはこうするしかなかった、不義を働いたのはいつわりだというわけです。そして、解毒するには彼女の命を差し出さなければならない。

 やがて、悪者は退治され、彼女の真意もわかり、すべての企みが解決した後に、最後に醜く変形した義理の息子の顔が残る。最後に、彼女は自らに刀を突き刺して果てる。という話の筋です。

 このように、すべての話のからくりが解決した後で、劇の主役である美女は自ら死ぬという話の筋は、一昔前の二時間ドラマでもあらわれる、よくある話の展開ですよね。私が思い出すのは、子供のころにみた「土曜ワイド劇場」。天知茂さんが明智小五郎に扮する、江戸川乱歩シリーズですね。だいたいは、ヒロインが殺人事件の犯人で、すべてのからくりを天地茂さんが説いた後に、ヒロインは自分から毒をもって自殺する、切なさがのこるドラマの筋書きは、まさに「摂州合邦辻」にもあらわれる様式美かもしれません。