内田樹「沈む日本をそれでも愛せますか」を読む

今年の年末年始は、曜日の組み合わせがよくて休みも長くなりました。まあ静かに本でも読もうかと思っています。読んだのは「沈む日本をそれでも愛せますか?」という、内田樹さんと高橋源一郎さんの対談本です。311前の直前に書かれたこの本は、いま読むと当時の時代の雰囲気を濃厚に表しています。賢者二人とはいってもこういった世間の雰囲気にはそうとうに影響を受けるというものなのですね。

残念ながらここで言及された未来は、ことごとくはずれています。民主党が第二自民党になるだろう。理念をなくした自民党はもはや早晩につぶれるだろうとした予測は、現在とは反対ですね。自民党は復活して、理念をなくして迷走しているのは、むしろ民主党ではないかと思います。

名前こそでませんが、対談の司会者である渋谷陽一さんでさえ、その当時のマスコミの「政治とカネ」の印象があるのでしょう。小沢さんを腹黒政治家の典型として、当時のマスコミ世論と同じく否定的にとらえています。これも、小沢さんは結局無罪ということになりました。ゆいいつ当たっているのは、小沢さんと鳩山さんの相性がかなりよかったのでは、ということくらいで、このはずれっぷりはむしろすがすがしいかもしれません。

ただし、ここまで予測がはずれたということは、「民主党政権が安定して、日本の国のあり方を変える」可能性が、対談が行われた政権交代当時は存在したということです。そして、今ではその可能性のほとんどが失われたのだろうということです。気が重くなりそうですね。 沈む日本を愛せますか?