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バブル経済前夜の雰囲気(田中康夫「たまらなくアーベイン」を読んで)

たまらなく、アーベイン

田中康夫さんの「たまらなくアーベイン」と言う本を、なんの弾みか、アマゾンでポチってしまったのです。内容はといえば、男女の恋愛ゲームに関するエッセイと、70年代~80年代にかけた洋楽AORのアルバム紹介が混じって綴られた本です。

正直なところここに上げられたアーティストやアルバムをすべて知っているわけではなくて、テディペンダーグラスやリーリトナーは知っていても、他には知らないものばかり。どちらかといえば、ここにとりあげれらた曲やアルバムは、60年代後半生まれの私よりも、60年代前半生まれの私の姉貴世代がドンピシャはまるのかなと思いました。当時は、耳に聞きやすくなじみやすい、AOR・シティポップのジャンルとフュージョンとかは、ごっちゃになって聴かれていたと思います。実際に姉のレコード棚をのぞいたとき、ユーミンのアルバムとリーリトナーのアルバムが並んでて、長渕剛のアルバムなんかも混じってたよと思いだしました・・

また、この本に載せられたエッセイからは、バブル経済の前夜、80年代前半の雰囲気を絶妙に表しているような気がしました。たとえば、大学生ならばバブル経済の前なら、基本的に慎ましいくらしぶりをしましたし、親のスネで贅沢に遊びほうけていた大学生は例外だったと思います。海外アーティストが大挙して来日したのはバブル経済が始まってからで、バブル前夜は海外アーティストの音楽は、もっぱらレコードやらFMラジオで楽しむものだったと思います。けれども、都心のお洒落なお店なんかの情報が、テレビや雑誌で大量に発信されだしたのを実感したのが、この頃だったと思います。特に大きく影響を受けたのは、わたしのように、北関東の田舎で暮らしていた人間です。北関東の人間にとって、都心は日曜日に遊びに行こうとすればいける距離です。そうとうに田舎者の価値観を揺さぶったはずです。

そんな、都心のお店情報みたいなものがいつごろまで珍重されたかなと思いだすと。2000年くらいだったでしょうか、21世紀くらいまでだったでしょう。その後は、地方にもSCが立ちはじめ、都会と地方のライフスタイルには、目立った違いがなくなってきた。それと連動するように、AORやシティポップスのようなドライブやデートの場を盛り上げるような音楽ははやらなくなった。例えば、宇多田ヒカルの歌は、かつての洋楽のような洒落た意匠を身にまとっているけれど、そこで歌われるのは、もはや、男女の恋愛事を盛り上げる、車やお店といった小道具ではなくて、内面悩み苦しみですね。

田中康夫さんの「たまらなくアーベイン」すべての曲を知らない私には、そのような80年代前半のドキュメントとしておもしろく読ませていただきました。