台地に住む人たち盆地に住む人たち(甲州街道を歩く11)

f:id:tochgin1029:20170726185133j:image前日の晩はつよい雨が降ったようで路面は濡れていました。わたしはといえばそれに気が付かないほどぐっすり寝ていたようです。泊まったさきの甲府のビジネスホテルには、小学生の団体が大勢でとまっています。そういえば夏休みが始まったことにいまさら気が付きます。前日に比べて気温が低いのはいいですが、いつ雨が降り出すかわからないような雲行きです。雨具を着けるのはあまり好きではありません。降らずに済むことを願いながら出発します。穴山駅までの列車からも雨にぬれた路面が見えます。
f:id:tochgin1029:20170726185159j:image下におりて昨日の歩きを続けます。あいかわらず殺風景なバイパスの国道沿いですが、穴山橋を渡ると旧道に入ります。旧道に入ると少しだけ古い建物と旧い街道沿いの集落の雰囲気を眺めることができます。台ケ原までの10キロ以上もさある道中には、このような古い建物が残る集落が点々としていて、それほど退屈はしない道中です。武川という集落では恒例の朝市をやっています。道ばたで案内をしている若い人にあいさつすると、どちらまで?と聞かれます。甲州街道を歩くというと、少し呆れたように「頑張ってくださいね」と言われました。
f:id:tochgin1029:20170726185227j:image台ヶ原の宿場の手前には、古道が残っていて、その道を進みます。定期的に整備はされているようですが、季節がら小さな草が路面を覆っていてすこし歩きづらい道です。
 たどり着いた台ケ原の宿は、これまでの道中を思い出しても、比較的旧い宿場の雰囲気が残っています。古い建物はリノベーションされておしゃれなカフェや雑貨店などに模様替えしています。地味な街道歩きの中で、このような、華やかな観光客の姿を眺めると、すこしだけ自分がなにか場違いなところにたどり着いてしまったような気になります。その台ケ原の中でも、人を集めているのは二軒のお店で、生信玄餅の金精軒本店と、地元では有名な造り酒屋の七賢の酒蔵兼店舗です。
f:id:tochgin1029:20170726185254j:imageなかに入った七賢の店舗では、麹を使ったドリンク類を販売していて賞味にあずかります。暑い盛りの栄養ドリンクとして、冷たい甘酒が見直されているようですが、ここでもメインは、お酒よりも甘酒のほう。ここで飲んだ甘酒の甘さは、スポーツドリンクよりも自然に身体になじんでいくような気がします。
 台ケ原からは、延々と上り坂が続く、体力を奪うような道です。途中の教来石宿は、宿場のはずなのですが、こんどはどこからどこまで宿場なのかはっきりしませんね。それにしても七里岩の長いこと長いこと!ここまで延々と歩いても歩いても右手にはずーっと崖が続いています。あいにく雨も降ってきたので、神社の境内でひと休憩します。こういう時に道ばたの神社があるのはほんとうに助かるもので、これまでの街道歩きでもときどき助けられています。
f:id:tochgin1029:20170726185347j:image教来石を過ぎた集落のはずれには、突然のように関所あとが現れます。そういえばこのあたりで甲斐国は終わり、信濃の国に入っていきます。
 まもなく、信州最初の宿場の蔦木に到着します。今日の行程はここまで。この集落には公共交通機関というものがまるでありません。もよりの駅は信濃境駅ですがやっぱり崖の上にあります。この日もJRの駅までの崖を登る道をあるきます。
f:id:tochgin1029:20170726185425j:imagef:id:tochgin1029:20170726185431j:image蔦木のあたりでは、標高は730Mでした。登りきった先の集落で標高を見ると900m!わずかな距離でこの標高差の違いを見ると、ここでも崖の上と下は別世界のようです。このあたりには遺跡とか博物館があるようで、とても魅力的な施設なのですが、見とても見学する余力はありませんでした。。
 JR信濃境駅に着くと、次の列車までは一時間以上。さいわい駅前で一軒だけ開いていた喫茶店に入ります。この店はいでたちの上品なご夫人がひとりで切り盛りしているお店のようで、店内はピアノが置いていて、クラシック音楽がずっとかかっています。がさつな関東の国からきたわたしには、とても浮世離れしたような空間でした。
f:id:tochgin1029:20170726185457j:image実はわたしの母親も信州生まれで、どこか教養好きな面を持つ信州人には、クラシック音楽好きという印象があって、田舎のお店にクラシック音楽なんて、いかにも信州っぽいなと思いました。それまで歩いた山梨の甲府盆地あたりの人たちだと、印象はそれとは反対で、教養よりも実利を重んじる商売人という印象。食事をしたお店や買い物をしたお店のどちらも損得にならないことには淡白な印象をもっています。おもしろいのは、そんな気質が甲府盆地から崖を登り台地を抜けて、信州に近くなるにつれて、グラデーションのように気質は変わってくるように思います。特に八ヶ岳近辺の信濃境での浮世離れしたようなお店を見つけて、どうみても甲府盆地あたりのひとたちの人柄とは違っていて、その違いをとても面白く感じています。
さて、甲州街道も信州に入るとゴールはまぢかです。次の旅では、いよいよ下諏訪にいよいよ到着します。