新しいライフスタイル?(「ノマドランド」を観た)

街中で中高年アルバイトと出会うことが多くなったことに気が付きます。コンビニでの買い物とか。多くを期待できない年金の受給さえ将来に不安がある。企業を定年退職した人たちも、拍手に囲まれ花束をもらい職場を去った翌日には、すぐに職探し。なんていう…

絶望と離脱「サン・ラー(space in place)」

サン・ラーというジャズミュージシャンが居ました。彼の音楽はいわゆるフリージャズというジャンルにくくられていましたが、その奇抜な格好と時代ゆえに、一種のサブカルチャーのように見なされていました。1980ー90年代の頃、スイングジャーナルのよ…

久しぶりの美術館

新型コロナの感染予防とのことで、街中のあらゆる店は営業自粛になりました。これまで気軽に立ち寄っていた美術館ほとんどが休館になりました。この異常がいつまで続くのか?なにが一番不安な気持ちを沈めるには必要かと思うと、それは文化芸術や教養の力な…

あるきづらい石畳の道(東海道を歩く6)

しばらく、街道歩きはできないでいました。今年の冬は、身辺の忙しさがあって出かける余裕がなければ、3月になっても花粉症が怖くて歩けない次第。4月にもなり、ようやく花粉症も怖くなくなったので、久しぶりに歩きに出かけることができました。4月になっ…

中から外から?(「古代日本文化の源流」金達寿 を読む)

「古代日本文化の源流」という本を、古本屋でたまたま見つけて読みふけりました。棚に転がっていた300円ばかりの本はなかなか面白いものでした。谷川健一さん、金達寿さんの二人の著者が、相反する意見を戦わせ、それが日本の古代文化に関する、立体的で…

心の中は異邦人(「湾生回家」を見て)

毎年、2月から3月は故人たちの事を思い出すことが多くなる季節です。つい先日は、長い闘病を続けた叔父がなくなりましたし、父の命日がまもなくやって来ます。 ある時に流れてきたtweetに「湾生回家」という映画について述べられていました。日本統治下の…

「湘南」に実体はあった【大磯限定】(東海道を歩く5)

平塚宿まで到達した東海道ですが、「湘南」というこの地域を称する漠然とした名称がこの地域の現実の生活を見えにくくしていると感じました。けれども先入観ぬきなら平塚の街は、旧めかしい金物屋の看板建築が残り、これまた1時代前のアーケードの作りなど…

「湘南」には実体がない(東海道を歩く(その4)

戸塚宿までの東海道は、思ったよりも平らな地形のところが少なく、細かな上り下りの道の多いことが印象に残っています。けれども、あまりにも都市化が進みすぎていて、その土地その土地の個性が掴みとりづらいなと感じています。今回の歩きは戸塚宿から始め…

おためごかし(「キメラー満州国の肖像」山室信一)

韓国の民主化運動についての、二つの韓国映画「タクシー運転手が」「1987ある闘いの真実」を見たときに、そこで描かれている独裁政権のありさまが、とても日帝に似ているなと思ったのです。独裁政権といいながらも、たとえば全斗換はヒトラーのようなシ…

街はずれの坂道(東海道を歩く(その3))

東海道を歩いてみる景色は、あたりまえなのですが、やはり中山道とも違うし、甲州街道とも違います。いまでこそ海岸線は遠いけれども、往時の東海道がとても海の近くを通っていることがよくわかります。神奈川宿があった場所も、いまでは海岸線は遠いけれど…

周縁と境界の道(東海道を歩く(その2))

歩き始めた東海道は、品川宿のあたりも旧跡がたくさん残る場所でした。江戸という町はそれぞれが木戸で仕切られた管理社会です。その江戸から外れた地だからこそ、町内では憚れるとされたことも、おおっぴらに行えたことでしょう。 鈴ヶ森の刑場跡から本日の…

楽しい街道歩き(東海道を歩く(その1))

久しく、歩いていませんでした。関東あたりの道歩きがつづいたせいか、道歩き当初の新鮮な楽しさが薄れたかもしれません。 ただしその間、体重計の数値は上がっぱなしで、定期的に通院している医院では、運動をと言われる始末。そういえばおなか周りもなんと…

内面は譲り渡さない(映画「1987ある闘いの真実」)

『1987、ある闘いの真実』2018年9月8日(土)シネマート新宿他、全国順次ロードショー! 「1987ある闘いの真実」という韓国映画を見ました。この前に光州事件をとりあげた「タクシー運転手」は、ふだん映画を見ないわたしにとって、とても衝撃をうけた映画で…

やっぱり河に寄り添っている(北関東の諸街道15)

いよいよ、日光街道からの歩きも今日でおしまいです。ただ、自宅にほど近い場所ゆえ、身近な景色を進む行程には、ゴールという高揚感はなかなか生まれないものです。さて、越谷駅にほど近い宿場町の近くから再び歩き始めます。越谷駅の南側には、目立つよう…

河に寄り添って(北関東の諸街道14)

街道歩きも次第に日本橋に近づきました。那須や白河に向かうなら、早起きしてながながと電車に乗り・・なんてところですが。今回は、すべて埼玉県内を歩くルート。すぐに目的地の栗橋にたどり着きます。たどりついた栗橋の街は、宿場と駅とは少し離れていま…

抵抗すること(映画「タクシー運転手」)

映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』公式サイト 80年代の頃、韓国の民主化運動がかなりニュース報道で取り上げられていたことを覚えています。大学生たちが路上で抗議をしては警官や軍隊に排除される。その繰り返しでその実情は報道ではよくわからな…

おしゃべりな道(北関東の諸街道13)

進路を南にとって、宇都宮から小山宿まで進んだものの、前回はあまり変化の少ない行程でした。というのも、国分寺や下野国府が立地していた、旧い歴史を持つ土地を通りながらも、その歴史性を否定するかのように河岸台地上を街道筋が単調に通っていたことも…

ディスリンピア2680(東松山「丸木美術館」)

丸木位里・俊夫妻の作品「原爆の図」が常時展示されている東松山の丸木美術館は、前々から訪れてみたかった場所のひとつです。けれど、東松山の外れ、電車やバスで行くに少し不便な場所にあるこの美術館は、訪れるのをおっくうに感じるような場所に建ってい…

驚くことばかり(映画「ワンダーランド北朝鮮」)

映画『ワンダーランド北朝鮮』 | 北朝鮮の”普通”の暮らしとその人々。これはプロパガンダか?それとも現実か? 平昌オリンピックの頃までは、いつか東アジアで戦争が始まるとかミサイルが飛んできてもおかしくないかといった国際情勢だったと思います。それ…

古の歴史を感じない道(北関東の諸街道12)

今回の街道歩きは、例幣使街道から日光をまわって奥州街道を白河まで北上、北関東の街道をひとまとめに通ってきました。残ったのは宇都宮から日本橋までの道のりです。 今回の歩きでは、宇都宮の街が結節点となりました。まずは宇都宮駅へ、さらに宇都宮駅か…

飼いならしは愛?その2(安冨歩「誰が星の王子さまを殺したのか?」)

前回は、サンテグジュペリの「星の王子さま」を読みました。その原典を読んだ後で、今回は、安冨歩さんの「誰が星の王子さまを殺したか?」という本を読んでいます。「星の王子さま」をハラスメントの小説として捉えなおしたこの本は、 他の解説本のようにバ…

飼いならしは愛?その1(サンテグジュペリ「星の王子さま」)

ほんの数ヶ月まえでは、国内でもっとも報道されたのは有名人のセクハラ騒ぎでしょう。けっして、そんな騒ぎが自分に無関係とは思えないし、「社会人の教養」みたいなものとしても知っておいたほうがよいだろう。そんな軽い気持ちから、集英社新書「部長、そ…

戦後社会の魔物(橋本治「草薙の剣」)

戦後の日本に進駐した米軍に対して、支配層の願いはただひとつ「國體護持」が条件でした。だから戦後社会にも國體というものは存在するはずです。無実の市民が警察に捕まるようなわかりやすい抑圧ではなくて、お茶の間のテレビから親兄弟や友人の口から、個…

大切だが重いことを考える道(北関東の諸街道11)

前回は、芦野宿まで奥州街道を歩きました。奥州街道の北上は白河までにしようと決めているので、今回の歩きのひとまずのゴールでもあるのです。新幹線を使わないと決めれば那須への公共交通の足はとてもたよりない状態で、いったん宇都宮で前泊することにし…

黙々と歩く道(北関東の諸街道10)

大田原宿までたどり着いたのはひと月まえのことでした。やっと春がやってきて、咲きだした花を楽しみながらの道中でした。すでにあたりは新緑の季節になっていて、まだ若い淡い緑色が日を浴びて透き通っています。宇都宮からの電車はこの日もゴルフへ向かう…

自由の当事者(4月14日 国会前へ)

2015年8月30日の国会前行動は、参加した人にとって、いまでも思い出されるくらいの出来事で、わたしもその時のことを記事にしました。 8月30日 国会前へ - tochgin1029のブログその時に繰り広げられた「安保法制反対」というスローガンは、打ち砕かれたけれ…

花がいっぱいの道(北関東の諸街道9)

2月に喜連川まで歩いてからというもの、花粉症もちの私にとって、3月はスギ花粉が怖い季節。歩くのを自重していたところなのですが、だんだんと暖かくなれば、虫が久しぶりに歩きたくなり、久しぶりの街道歩きです。なんだか地中にこもっていた虫たちが地…

鬼怒川を渡る(北関東の諸街道8)

前回の歩きでは日光から宇都宮まで到達しました。かつての例幣使はここから江戸に向かったのですが、ここから日本橋までの道のりは単調な道のように想像ができます。まっすぐ日本橋には向かわずに、一旦は白河を目指す奥州街道の道を選びました。 前回の宇都…

戸惑いの赤(大田記念美術館「明治維新150年幕末・明治―激動する浮世絵」展)

原宿にある大田記念美術館では現在、幕末から明治にかけての浮世絵を展示していて見に行きました。北斎や広重や国芳といった大家の作品はないけれど、幕末と明治初期に描かれた作品群を眺めていると「ご一新」のかけ声と共にやってきた明治の時代を、絵師た…

自分の心と身体2(再読「宗教なんか怖くない」橋本治)

宗教なんかこわくない! (ちくま文庫) 作者: 橋本治 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 1999/08 メディア: 文庫 購入: 4人 クリック: 10回 この商品を含むブログ (39件) を見る 橋本治さんの「宗教なんか怖くない」は、オウム真理教のサリン事件について書か…