明るい山の道(甲州街道を歩く4)

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 前回までの歩きは、西八王子駅あたりまでを歩きました。今回は甲州街道で初めての峠越えになります。
先々週に歩いたときは、いちょうの葉が黄金色に輝いていましたが、すでに葉っぱは落ちかけています。

f:id:tochgin1029:20161205232726j:image少し歩くと、多摩御陵への入り口が現れます。この多摩御陵というのは大正天皇の墓で、その隣の武蔵御陵というのは昭和天皇のお墓です。案内に書かれていた通り、近代になってから初めて天皇の墓は近畿を離れたというわけで、場所を決めるのにいろいろな論議があったのでしょう。こんもりとした低い山が並ぶ風景は、どこか奈良の明日香村の風景にも似ています。探したのが京都に似た景色ではなく、明日香村に似た景色であること。なにか意味があるように思います。次第にあたりは人通りが少なくなり、すかっとした直線の道に変わります。
f:id:tochgin1029:20161205232836j:image 高尾駅まで行けば、だいぶ山もちかづいてきます。この辺りはまだまだ紅葉が残っていて、緑色、赤色、黄色、茶色の入り混じった近くの山々が美しいですね。2か月くらいまえに「ブラタモリ」の番組で、高尾山が取り上げられていました。なんでも、このあたり広葉樹針葉樹の植生が入り混じり、そのため高尾山に生える植物の種類は驚異的に多いとのこと。このあたりの紅葉のきれいなことも、これと関連があるのではないでしょうか?小仏まではだらだらとした坂道がつづきます。しだいに狭い谷を中央本線と並行するようにないますが、それでも木曾谷などの険しさと比べればなだらかなもので、途中にある小仏関所の跡も、これまでに見た、碓井の関所や木曽福島の関所などと比べれば、簡素なつくりのようです。やがて舗装された道は途切れ、本格的な山道に入ります。久しぶりの山道は急な上り坂ですが、あまり長めのよいところはありません。登り切った先にある小仏峠は、それほど見通しのよくない場所でした。どうやら明治天皇が在所した場所らしく、記念の碑が立っています。
f:id:tochgin1029:20161205232926j:image ここで、高尾山方面と相模湖方面は道がわかれます。どうやら、ほとんどの人たちは高尾山方面に向かうようです。相模湖方面にむかうのはわたし一人だけです。まったく誰にもあわない山道をぽつんとひとりで歩きますが、むしろ南向きの山道は、小仏峠までの道と違って、日が差し込むとても明るく快適な山道に変わります。f:id:tochgin1029:20161205233002j:image下には落葉した葉が山道にぎっしりとじゅうたんのように敷き詰められています。あっというまに山道をおりてもその印象は全く変わりません。南向きの斜面に広がる集落はここでも日が差してとても明るい。山の中から受ける暗い印象がまったくありません。
f:id:tochgin1029:20161205233017j:image 少しあるけば小原宿に到着します。甲州街道で本陣と呼ばれる建物は、3か所しか残っていないと日野宿の本陣で教えてもらいました。ここ小原宿に残る本陣もそのひとつですが、いままで中山道の本陣の建物や日野宿の本陣と比べれば、随分と簡素な建物でした。住人のようなおじさんが、庭仕事をしている家は、まるで普通の古民家と変わりがない印象です。東海道中山道と比べるれば、甲州街道のとおりすぎる宿場町は、いまのところは、濃厚な宿場の風情を感じるところは少ないようです。けれど、山間の集落の意外なほど明るい雰囲気がとても好ましくて、これもまた甲州街道の特徴なのかもしれません。
f:id:tochgin1029:20161205233037j:image 小原宿からいったん坂を上り下りすれば次の与瀬宿につきます。JR相模湖駅のあたりが与瀬宿のようですが、今日はここまで、この先もたぶん明るい山道になりそうな気さえする、気持ちのよい行程でした。