2016-01-01から1ヶ月間の記事一覧

幸田露伴の「五重塔」に近代的自我を見る(橋本治「失われた近代を求めて」番外)

橋本治さんの「失われた近代をもとめて」のシリーズをもとに、口語体と文語体との関係を考えています。では書き言葉と話し言葉は太古の昔から異なっていたか?といえばそうでもなく、谷崎潤一郎は、平安時代に話されていた言葉が、源氏物語に代表される当時…

本当に日本語の進化だったのだろうか?(橋本治「失われた近代を求めて3」)

夏目漱石の「坊ちゃん」はいまでも、多くの人に読まれる作品ですが、視点を変えれば、前近代と近代の対立をベースとして描かれた小説です。勉強が嫌いなくせに先生をする主人公の坊ちゃんは前近代の方。反対に、赤シャツと呼ばれる教頭は、話のはしばしに洋…

まだ成熟していない(橋本治「失われた近代を求めて」)

すぐれた文章表現のことを、橋本治さんは「文章そのものが語り出す」と述べていました。成熟していない口語体は、文章と書き手の間に、自身の実存を込めなければ表現にならなかった。だから口語文が生まれたばかりの頃、作品で自分の事を語るような小説ばか…

実は凄かった田山花袋の「蒲団」(橋本治「失われた近代を求めて1」)

橋本治さんが書かれた「失われた近代を求めて1ー3」のシリーズをこの正月に読んでいました。読んでも読んでも読み切れないくらいの本を橋本さんは書かれていて、現在でもつぎつぎに新しい本が刊行されている。この「失われた近代」で橋本さんが対象とした…