2014-01-01から1年間の記事一覧

半藤一利「日本の一番長い夏」

松本健一さんの、戦前や戦時中についてかかれた本を読みあさるうち、半藤一利さんの「日本の一番長い夏」という新書を見つけました。これがかかれたのは昭和38年で、様々な戦争の体験者を呼んで、終戦当時のことを語って貰うという企画です。総勢30人ほ…

明治の精神と明治天皇

松本健一さんは、前回「畏るべき昭和天皇」という本を取りあげましたが、もう1冊取り上げるのは「明治天皇という人」という本です。夏目漱石の「こころ」とか、明治天皇の死に殉じた乃木将軍の心境、司馬遼太郎さんの著作に現れる「明治の精神」というもの…

松本健一「畏るべき昭和天皇」

つい先日亡くなられた、松本健一さんが書かれた「畏るべき昭和天皇」という本を読みました。天皇や戦前のナショナリストにかんする書き物が多い松本さんは、一方で天皇の戦争責任は「ある」と明言している。右とも左ともどちらともいえない存在でした。ここ…

生きるための希望

数日前ですが、帰国子女の方でしょうか、日本に帰ってきたときに、人々の目が死んでいるなと感じたというツイートを目にしました。毎日の通勤電車の中で、周りの人たちの顔を眺めて、私も同じようなことを感じるときがあります。車中では皆スマホをいじりな…

将軍を追い出した国

日本の権力構造の中心が空洞であるといい、その空洞の理由を天皇の存在にもとめる、彼が自分から権力を公使しない特徴にに求める言説があったと思います。ですが、いやそれは違うのではないか?と、考えさせる本を読みました。 「日本人と参勤交代」という本…

信濃路から木曽路へ(2)

一日すぎた、塩尻はやっぱり怪しい天気です。雨さえ降らないでくれれば、と願うのですが、いったい全体どこから沸いてでてくるのかというほどに、山の向こうから雲がどんどんわき出てきて、分厚くなっている。 昨日述べたように、現在の塩尻駅は30年前に峠…

信濃路から木曽路へ(1)

中山道を巡る旅を続けています。信州はやっぱり広いということを実感します。どこまでいっても、峠をいくつ越えても信州は続く。前回は、下諏訪まで歩いたけれど、今回は、下諏訪から塩尻を通り奈良井までの路です。天気は雨が降ったりやんだり、このシチュ…

伊勢物語を読んで想うことあれこれ

突然のように、古文が読みたくなりました。図書館で探したけれど、あるのは現代語訳やら解説書ばかりで原典がない。困ったあげく書店に駆け込めば、こちらも似たり寄ったりの状況でしたが、幸い岩波文庫の黄版が置いていて、なんとか見つかりました。 古文が…

上野の森美術館「ボストン美術館浮世絵名品展」を見た

上野の森美術館で行われている、ボストン美術館所蔵の葛飾北斎展を見に行きました。最近の大手メディアが後援している美術展で気になるのは、人があまりにも多いこと。土日は込むだろうと避けたのですが、平日にも関わらず多くの人・・・行政の支援が薄くな…

信濃路を巡る(三日目)

さて、最終日はいよいよ和田峠越えです。昨日のおじさん二人ずれは早々に旅立ったようです。町営のバスで昨日の最終地点である和田宿まで行きます。バスは小学生の通学バスにもなっていて、ぽつぽつと小学生と一緒になります。いつもは専用バスなのでしょう…

信濃路を巡る(二日目)

信濃路を歩いて巡る旅、二日目は望月宿からです。 八月とはいえ、長野の小中学校はすでに二学期が始まっているから、現地はまったくの日常モードです。観光客などいませんし、同泊は工事で滞在しているらしい作業仲間のグループでした。地方の旅館は本当にこ…

信濃路を巡る(一日目)

中山道を、延々と歩く旅を今年の冬から始めました。始めたというよりは、歩いているうちにおもしろくなってきて、酔狂にも全部歩き通してみよう。という気持ちになったのが、今年の冬ころです。 現在は、信州路を歩いています。今回は、岩村田という宿から和…

「東西豪農の明治維新」を読む

「東西豪農の明治維新」という本を読みました。読み物として幕末を描いた本は、掃いて捨てるほどありますが、豪農という存在に着目した本を読むのは初めてですね。 豪農というのは、農村内でも指導者的な存在で、意見をまとめて、藩との交渉を行っていました…

「水戸学と明治維新」を読む

お盆やすみは読書三昧ですね。一日一冊みたいな調子で読んでいる所です。いま読んでいるのは「水戸学と明治維新」という本。江戸時代にあれほど庶民の文化が花開きながら、次の明治政府が、なぜ権威主義的なのか?という疑問があったからです。 水戸学の起こ…

宮本常一「私の日本地図ー萩」を読んで

「私の日本地図」という宮本常一さんの書、かれこれ40年以上も前に、宮本さんが歩いて調べた各地のルポです。そのシリーズ中の、萩の巻を借りて読んでいます。 萩という街は不思議なことに、明治維新の勝者である長州藩の中心であったのに、その後すっかり…

一億人を「仲間」と思わせるものの正体

テレビやマスコミでいう「仲間」とか「絆」の胡散臭さは、このところずっと気になっていることです。一般的には、これを江戸時代の封建社会や、村社会に起源があるものと思われています。 私も、少し前まではそう思っていました。過酷な封建社会のなか、農民…

田中正造記念館を見学した

館林にある、田中正造記念館にいって来ました。実家のある栃木から館林は近いはずなのですが、訪れたのはほぼ初めて、平凡な田園都市をイメージしていたのですが、そうではなく城下町だったのですね。中心市街地は寂れていますが、それでも古い屋敷とかが点…

街道歩きからみた上野下野

信濃の国が、山と谷に囲まれた風景や暮らしを共有する地域の連邦制と前回述べたところで、じゃあほかの地域はどうなのだろうかと語ってみたくなりますね。例えばかつて毛の国と呼ばれた上野や下野の国。両方に共通するのは、どちらも内陸部だということ。か…

街道歩きから見た信濃の国

昨年から中山道を歩きつつ、今は関東を抜けて信州に入りました。信州といえば、長野を中心とした北信地方と松本を中心とした中信その他にも東信やら南信やら様々な山と谷に別れていて、それらは互いに仲が悪いという言い方がされますよね。それなのに信濃と…

「士族の商売」再考

日本の名だたる大企業では、一般の社員が役員や会長の姿をみることはまれですよね。多くの場合は巨大なビルの上層フロアに会長室をこしらえて、立派なじゅうたんを敷き詰めている場合が多いでしょう。彼がたまたま現場を見学しようものなら、大名行列さなが…

鹿島コンビナートの労働と社会

地元の古本市で、中岡哲朗さんという方の「コンビナートの労働と社会」という本を掘り出しました。もう40年も前に書かれたものなのですが、これがなかなかにおもしろく、古本あさりの冥利につきるのですね。 この本が書かれたのは、1974年石油ショック…

屏風絵を眺めるのは楽しい。

昨日は、千葉県の佐倉という所にある、国立歴史民俗博物館というところに行きました。展示物の中では惹かれたのは洛中洛外図屏風をはじめとした屏風絵。複製画ではあっても、十分に楽しめますね。 近代化を通り抜けた私たちの感覚では、遠くのものは小さく。…

歌舞伎の台本とTwitter

歌舞伎の台本を作り、舞台にするまでの行程というのは、全体を統括し監督する「立場」の人間が当然のように存在するものだ!と考えがちな前提をぶちこわすものです。歌舞伎の役者たちは、まず自分の役どころを飲み込み理解はしますが、台本の全体を知ること…

橋本治「江戸にフランス革命を!」を読む5

どこもかしこも、忙しく動き回るのが日常である中、ともすれば、古の人たちはさぞや、のんびりしていたのだと思いがちですが、そうではなくスピードのある時代だったということです。 橋本治さんの「江戸にフランス革命を!」は、昔の人たちが、さぞやのんび…

橋本治「江戸にフランス革命を!」を読む4

「世間にご迷惑をおかけしました」と言いながら、頭を下げる有名人のたぐいは、日本ではいつもの日常光景ですね。べつに当事者ではないのになんで謝られるのか?よく考えればへんな話ですよね。と思うのだけれど、日常になるとそれが不思議なことでもなんで…

橋本治「江戸にフランス革命を!」を読む3

橋本治さんの「江戸にフランス革命を!」は、江戸に関する考察をしながら、現在を見渡す視点があります。見解は述べてはいませんが、士農工商という身分制度の中の、農民階級についての疑問を述べているのが、実は鋭い見方だと思いました。 おそらく当時の人…

橋本治「江戸にフランス革命を!」を読む2

で、江戸時代は実は、現在と同じ法人社会だといいます。「家」という名前の社会です。また、家の主ではないと一人前とは見なされません。家が社会を構成する単位なので、長男なら跡継ぎですが、次男三男は都会に出て、丁稚に出ます。職場と住居が現在のよう…

橋本治「江戸のフランス革命を!」を読む1

橋本治さんの「江戸にフランス革命を!」という本を読んでいます。そうとう古い本で書かれたのは、1980年代も後半、バブル経済まっさかりという頃でしょうか。なにより私は、この本のタイトルが好きで、それだけで買ったようなものです。アマゾンで買う…

NHKBS「にっぽん縦断こころ旅」を見ながら思うこと

BSNHKで放映されている、火野正平さんが自転車で日本の各地をまわるという番組を、ときどき眺めることがあります。全体にほっこり臭がただよう番組の構成は、あまり好きではないのですが、それでも画面に映る、日本各地の山河の景色は、本当にバラエテ…

ETV特集「ネットワークで作る放射能汚染地図」

録画しながら見れていなかった、ETV特集「ネットワークで作る放射能汚染地図」の最新の放映を見ました。そこには三年を経過して、福島に降り積もった放射能汚染が、どのよう に変化したかが、主に語れています。 調査によれば、全体を通して汚染物質は、半減…