2015-01-01から1年間の記事一覧

追悼 オーネットコールマン。

一昨日、ジャズミュージシャンのオーネットコールマンがなくなったという訃報が流れました。最近は来日の予定だったのがキャンセルになり、おそらく体調がよくないのだろうと想像していたのですが、残念ですね。ご冥福をお祈りします。 オーネットの音楽にふ…

奈良時代「私」のゆくえ(橋本治「双調平家物語」2)

「天皇は悪くない。悪いのは君側の奸だ」という大義は、近代では226事件の反乱将校たちにも使われた、日本における反乱事件の常套句です。権力者そのものを問わずに、周囲の側近たちが諸悪の根源だという、その屈折した理屈のわかりづらさは現在も引き継…

清盛義仲頼朝(橋本治「双調平家物語」)

橋本治さん「双調平家物語」少しづつ読みながら、最後の16巻、治承の巻、最後まで読み通しました。平家物語といいながらも、取り上げる時代は、越の国からやってきた、得体の知れない男(継体天皇)の話から、平家滅亡まで、奈良の都から平安の都への王朝…

バブル経済前夜の雰囲気(田中康夫「たまらなくアーベイン」を読んで)

たまらなく、アーベイン田中康夫さんの「たまらなくアーベイン」と言う本を、なんの弾みか、アマゾンでポチってしまったのです。内容はといえば、男女の恋愛ゲームに関するエッセイと、70年代~80年代にかけた洋楽AORのアルバム紹介が混じって綴られ…

投資家目線などいらない(橋本治「乱世を生きる」市場原理は嘘かもしれない)

乱世を生きる 市場原理は嘘かもしれない (集英社新書) 先月から、箱根山の火山活動が活発になり新聞紙上をにぎわせています。昨年、木曽御嶽山では突然の噴火で山頂で登山を楽しんでいた人たちが多数なくなったことや、日本列島の火山が、最近は活発化してい…

宮城道雄 随筆集「春の海」

宮城道雄の「春の海」という随筆集と、たまたま古本市で出会いました。「春の海」は、正月になればあれでも聞く、あの琴のメロディーで有名で、宮城道雄はその作曲者でもあり、自身も琴の演奏家です。 彼は目が見えませんので、その文章に、色彩に対しての記…

川面の美しさ(木曽路をめぐる(その2))

木曽福島の朝は、エアコンをつけないといられないくらい寒い朝でした。寒暖の差が半端でないですね。前後左右がわからなくなる木曽福島の街がおもしろくて、朝は、少しだけ街歩きをしました。 街中には木曽川を渡る橋が町中にいくつもあります。橋の上から川…

花いっぱいだった木曽路(木曽路をめぐる(その1))

さすがに、冬の雪道を辿ることなどできないので、中山道を歩くのもすっかり間が空いてしまいました。前回の歩き11月からは半年ぶりとなります。体力が不安なのです。 半年ぶりに降りた奈良井宿は、思いの外に静かでしたね。来週のGWはきっと相当に込むので…

寂しげな香取神宮

香取神宮は、下総の国の一宮とされている神社です。下総の国を特徴づけるのは、あの大きく流れる利根川の景色と、低地と台地が入りくんだ複雑に細かく起伏にとんだ地形のことです。 今でこそ、川魚で生業を営んでいる人など本当にごくわずかですが、かつては…

大阪の街の中空構造(中沢新一「大阪アースダイバー」)

出張などで大阪を訪れたときに、一番の東京との違いを 感じるところは、坂が少なくて平坦な街だなとまず感じます。中心部は、御堂筋を中心とした広い通りが南北に通じていて、それと直角にも通りが交わっている。たとえば東京であれば、通りが整然としていな…

魅惑の坂道(佐倉の街を歩く)

千葉県の北東部の電車、総武線であれば千葉の先、京成線であれば、佐倉駅あたりまで来ると、台地と低地が入り組んだ中を電車が走ります。関東平野は日本でも一番ひろい平野だとされていますが、平らな土地がただただ広がっているわけではなくて、台地と平野…

自己犠牲は美しいだろうか(朝日新聞夕刊連載「ヤマトをたどって」)

今週まで、朝日新聞の夕刊では「ヤマトをたどって」というシリーズ記事が連載されていました。その記事のなかで、手塚治虫の泣いていた姿が記述されています。とある座談会で、ちょうど「宇宙戦艦ヤマト」の映画が、大ヒットした直後のことです。 手塚治虫が…

三島由紀夫と手塚治虫

1月~2月にかけて放映されていた「日本人はなにを考えてきたのか?」という教育テレビのシリーズ番組、三島由紀夫と手塚治虫について連続して放映していたのを見ました。両者は同じ世代ながら、戦争体験というよりも、戦争に対する見方は、両者では全く異…

頭を垂れること(神仏を信じるということではなく)

頭を下げるという行為を、最近は忘れてしまったなと自省します。他人の話ではなく、自分自身のことです。 子供の頃は、だらしがなくて身の回りのことなどきちんとできないなかった私は、毎月のように母親の大目玉をくらっていました。とはいえ、なんで大目玉…

近代人と前近代人の対話(橋本治と内田樹)

「橋本治と内田樹」一年前に読んだときは、どこかピントこなくて、すべてを読むことができなかったんですよね。最近、二回目に読んでやっとすべて読むことができたんですよね。 この二人の対談は、喧嘩ごしになるわけでもなく、だからといってなあなあの雰囲…

鎌倉時代のリアリズム「ひらがな日本美術史3」

学校の教科書では、鎌倉時代を代表する彫刻は、運慶や快慶に代表されるとあります。現在の目で、当時のリアリズム彫刻を特段不思議に感ずることはありませんが、その前後の時代、江戸時代にも室町時代にも平安時代にも、おなじようなリアリズムに類する表現…

絵巻物というメディア「ひらがな日本美術史2」

前々回の記事に引き続き、橋本治さんの「ひらがな日本美術史」を取り上げます。 この「ひらがな日本美術史」では、絵巻物というジャンルの古今東西の作品について取り上げられています。古いものでは「源氏物語絵巻」から「北野天神縁起」まで。古を懐かしむ…

内田樹「沈む日本をそれでも愛せますか」を読む

今年の年末年始は、曜日の組み合わせがよくて休みも長くなりました。まあ静かに本でも読もうかと思っています。読んだのは「沈む日本をそれでも愛せますか?」という、内田樹さんと高橋源一郎さんの対談本です。311前の直前に書かれたこの本は、いま読む…

橋本治「ひらがな日本美術史」

このブログ、気がつけば橋本治さんのエッセイばかりについて言及しています。橋本さんはデビュー作の「桃尻娘」から、いろいろまジャンルを書かれていますが、「桃尻娘」が、女子高生になりきった一人称で語られた小説であるように、「当事者になり切った」…

「摂州合邦辻」(歌舞伎の台本を読む)

「摂州合邦辻」という歌舞伎の台本を読みました。その話は、美しい武士の妻が、美少年である義理の息子に対して不義を働き、毒を盛って彼の顔を見にくく変形させてしまう。「ああ汚らわしい」とばかりに、父親にまで罵倒されつづける彼女の行動には、実は理…

滅びを遮られる(三島由紀夫「十日の菊」)

三島由紀夫の「英霊の声」という本には、前回の「憂国」の他に、「十日の菊」という戯曲が納められています。クーデターにより襲撃されたものの九死に一生を得た政治家とその家族が、恩人ともいえるまかないと再会を行ったことから、始まった話です。 物語の…

三島由紀夫「憂国」(英霊の聲)

三島由紀夫の「英霊の声」には「憂国」という小説も収められています。自死の光景を細かく描くのは、なかなかショッキングな内容です。 小説のすじは、226に親友の決起に関われず、逆に上官の命で親友の決起軍と戦わなければならない主人公が自死を選び、…

三島由紀夫「英霊の聲」

新年の一冊目は、三島由紀夫の「英霊の声」を読みました。松本健一さんの「畏るべき昭和天皇」には、この小説のことが引用されています。ですが、読んでみてもさっぱりわからないし、読者を悩ませる小説ですね。 小説は、226事件の将校たちや、特攻により…